「待機児童ゼロ」目標を断念?!待機児童問題の厳しい現実とは

hoikujo_taikijidou

待機児童問題の厳しい現実

今月4日、安倍首相は待機児童の解消に向けた新たなプランを6月に決めることを明らかにしました。

首相は「待機児童ゼロの目標は決しておろさない」と表明し、そして、現状を見極めて次なるプランを決定すると語っています。

これまで政府は、2017年度中に待機児童を「ゼロ」にする目標を掲げていました。

しかし、以前、安倍首相も「非常に厳しい状況」と表明している通り、その達成はどうやら難しいようです。

厚生労働省の発表によると、2016年4月時点での待機児童の数は2万3553人で、2年連続で増えたことになります。

働く女性の増加が当初の予想以上で、保育所需要の高まりに施設や環境の整備が追いつかなくなっている状況です。

そこで、新たに保育施設の拡充策を打ち出し、働く女性の後押しをしているという政府の姿勢を示すことがその狙いだと思われます。

そこで今回は、「待機児童問題」のとは何か、その原因や問題解決に必要なことなどについてポイントを押さえてみたいと思います。

 

「待機児童」、「保活」、気になるキーワードの意味は

「待機児童問題」とは、保育所が受け入ることのできる定員に限りがあるため、入所申請をしても入所できず、順番を待つ児童が発生してしまう問題です。

「保活」(※)と呼ばれる、子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動は、保護者にとって大きな負担となっていおり、大きな社会問題となっています。

政府もこの問題の解決に向け、「待機児童解消加速化プラン」などの対策を行っていますが、現状では問題解決には至ってません。

また、2016年の流行語大賞のトップテンに、「保育園落ちた日本死ね」が入ったことで、別の形で世間に大きな波紋を広げてしまいました。

※育児休暇中の母親は、職場復帰までに子供の預け先を決めておかなくてはならないので、少しでも早いうちから情報を集め、保育園入園までの手続きをスムーズに進める必要があり、そのための活動を「保活」(保育園活動)といっています。

 

少子化なのになぜ待機児童問題が起こるのか

ニュースでも報じられている通り、近年、出生率が低下し少子化は毎年進行しています。

それにもかかわらず、なぜ「待機児童問題」が起こっているのでしょう。

その主な原因としては、次の3つが挙げられます。

 

  • 長引く経済不況と女性の社会進出

以前の日本では、夫が外で働き妻が専業主婦として家庭を守る、といったスタイルの世帯構成が一般的でした。

この場合、母親が自宅で子どもの面倒を見ていたため、保育所の需要は今ほど高くはなかったので問題化しませんでした。

しかし、その後社会が大きく変化し、女性が社会に進出・活躍する機会が増えたことに伴い、共働きをする世帯が多くなりました。

さらに、長引く経済不況の影響を受け、夫(父親)だけの収入では家族を養うことが難しくなったことも、共働き世帯の増加を加速させているのです。

 

  • 保育士の不足

保育施設を増やすことができたとしても、子どもの世話をする保育士の数が不足している状況もあります。

子どもを預かるという責任の重さに見合う給与が得られないといった、労働環境の悪さを理由に保育士として働くことを断念するという人もいるのです。

保育士の資格を持っているにもかかわらず、保育に関係した職場に就業していない人のことは「潜在保育士」と呼ばれ、保育の世界で社会問題になっています。

 

  • 都市部への集中

厚生省のデータなどを見ると、待機児童は都市部に集中しています。

これは、仕事や生活をするための環境が都市部のほうが整っているため、人口が都市部に集中するからです。

そのため、地方、特に過疎地域には児童が少なく、都市部には多い状態が続くことになります。

都市部では、保育施設を新たに作ろうとしても、空き地の問題や周辺住民の理解が得られない(騒音等)ことなどから、それができないという状況もあります。

 

待機児童問題、解決のための最大のポイントは「保育士不足の解消」に

待機児童問題の解消のため考えられる対策はいくつかありますが、最大のカギは保育士不足の解消にあると思われます。

国は、十分な保育定員を確保するには、保育士が9万人程度足りないとしています。

また、保育士の資格を持っている人で、現在保育の現場で働いている人は3割~4割程度しかいないとも言われています。

その人たちが現場で働けるようになるだけで、保育所の保育能力が単純計算で現在の2~3倍に増えることになるのです。

そうした中、政府は保育士の待遇改善などで保育士不足を解消しようとしています。

2016年6月の「ニッポン一億総活躍プラン」に、保育士の給与を月額で約6,000円、さらに、技能や職務経験に応じて最高で月額4万円のアップすることなどを盛り込みました。

他にも政府は「潜在保育士」を保育職に就かせる(復帰させる)ため、さまざまな取り組みを行っていくようです。

こうした、施策が効果を上げるか今後注目されるところです。

さらに今回の新たなプランによりさまざまな施策がどんどん動き始めることが予想されます。

それらの動向に注目していきましょう。