再婚禁止期間を100日に短縮する法律案が可決・成立
離婚した女性が再婚を禁止する期間を定めた民法733条を改正する法律案が、2016年6月1日参議院本会議で可決・成立しました。
これにより、今後は離婚した女性の「再婚禁止期間(待婚期間)」が6カ月(180日)から「100日」に短縮することになります。
さらに、離婚時に妊娠していない場合(医師の証明が必要)には、離婚から100日を経過しなくても再婚できるようにする条文も盛り込まれました。
民法733条においては、1項で女性の再婚を6カ月禁止、2項で「離婚前から妊娠していた場合、出産の日から1項を適用しない」と規定していました。
この民法の規定に対しては、これまで何度も、女性にだけ「再婚禁止期間(待婚期間)」が設けられているのは「男女平等」を定めた憲法14条に反するのではないか、と問題視されてきました。
2015年12月、「100日を超える禁止期間は憲法に違反する」とした最高裁判決を受け、このたびの改正となったのです。
なぜ女性にだけ「再婚禁止期間」が規定されていたのか
この規定が設けられていたのは、「女性が離婚後すぐに再婚して子どもを妊娠した場合、その子の父親が誰かわからなくなるのを防ぐため」だとされています。
「親子関係の安定を最優先させることが子供の利益につながる」という民法の制度主旨にのっとったものなのです。
そして、この733条には関連する重要な条文があり、それが772条の2項です。
この条文は、子の父親が誰かわからなくなるのを防ぐための具体的な規定です。
つまり、
- 離婚後、300日間は「前夫の子」と推定される
- 再婚後、200日後に生まれた子どもは「現夫の子」と推定される
という、父親を決めるための「2つの推定」を定めています。
※ 法律において「推定」とは、事実・法律関係につき、反対する証明(反証)が成り立つまではそれを正当なものと仮定することです。
しかし、離婚後すぐに結婚するなどした場合、前婚の解消後300日以内で、かつ、後婚の成立後200日以後に出産する可能性が出てきます。
その場合、2つの推定が重なる事態が生じてしまうのです。
そうなると、前夫と現夫の「両方が父親」だと推定できてしまいます。
そのため、「再婚禁止期間(待婚期間)」を6カ月間設けていたのです。
再婚禁止期間を設けることで、民法は2つの推定が重なることを防いでいたわけです。
「再婚禁止期間」を100日に短縮した理由
しかしながら、この6か月(180日)という期間が別の矛盾を生んでしまっていたのです。
例えば、法律上「最短」のケースを想定したとします。
再婚禁止期間後に再婚し、その200日後に子供が生まれた場合、
【180日】(再婚禁止期間)+【200日】(再婚後の現夫が父親と推定される期間)=【380日】(①)
となり、現在の夫が父親だと推定されるには380日を要します。
しかし、前の夫が父親だと推定されるのは離婚後300日間ですから、
【380日】(①)-【300日】(前夫が父親だと推定される期間)=【80日】
つまり、80日間は前夫も現夫も子供の父親として推定されない「空白期間」ができてしまうのです。
これは、「早期に親子関係を安定させることが子の利益につながる」という、民法の規定の主旨から外れてしまっています。
このため、今回の改正で再婚禁止期間を80日間短縮し、100日にすることになったのです。
さいごに
我が国の民法は明治時代に定められたものです。
もちろん当時はDNA鑑定などのない時代でしたから、父親が誰かということを客観的・科学的に証明することが困難でした。
そこで、女性の一般的な妊娠期間などから父親を推定する規定を決めたのです。
ですが、いくら法律でも時代の流れや文化や考え方の変化にともなった、より実情に合わせたたものに変えていくことが必要なのだと思います。