「アダムズ方式」っていったい何?
2016年5月20日、改正公職選挙法とその関連法案が可決され成立しました。
その中で、衆院選における「1票の格差」を是正するための議席配分方法として、「アダムズ方式」という方法が採用されることになりました。
「アダムズ方式」は2020年の国勢調査の結果を基準にして、それ以降の選挙で導入されることになります。
この「アダムズ方式」ですが、ニュースなどでも一時話題になりましたので、耳にした方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、そのくわしい内容まではわからないという方もいるかと思いますので、今回は、この「アダムズ方式」について見ていきます。
問題の根本には「1票の格差」が
選挙制度の問題点を考えるうえで、最重要ポイントとなるのは「1票の格差」です。
各選挙区(都道府県)において1票の価値がまちまちで、1人1票の原則が崩れかねないというのが問題の根本にあります。
最高裁は、憲法の定める「法の下の平等」には「投票価値の平等」も含まれるとして、何度も「違憲状態」であるという判断を下しています。
そうした中で、この問題の解決策として提唱されているのが「アダムズ方式」なのです。
そもそも「アダムズ方式」とは
さて、アダムズ方式とはいったいどんな方式で、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
アダムズ方式とは各都道府県の人口を同じ数値で割って、それで出た数字(定数)の合計が全国の衆院議席数とほぼ同じになるように調整する方式です。
最終的には「各都道府県の定数」が「各都道府県の選挙区の数」となる仕組みになっています。
この方式を使って衆院選の小選挙区数を求めると、東北や九州などの人口の少ない13の県で1議席ずつ減り、
東京・千葉など人口が多い1都4県では合計で7議席増えることになり、小選挙区の定数は「7増13減」となります。
※計算例については、こちらのサイトで
このように、アダムズ方式は都道府県の人口の比率を反映しやすいのがメリットで、非常に合理的な方法といえます。
しかも、小数点以下を切り上げるため、どの選挙区にも少なくとも1議席を配分することになり、人口が少ない地方の県にも配慮をした計算方式といわれています。
ただ、その反面、各都道府県内の議席の差が大きくなるというデメリットもあります。
アダムズ方式を採用すると、青森や愛媛などでは定数が減って3人になってしまうに対し、東京は定数が29人にも上ります。
その差は約10倍です。
このように、都市部と地方の「議員数の格差」は今よりもさらに広がることになるのです。
区割りだけでなく選挙制度自体の見直しも必要
たしかに、30万人が1人を選ぶ選挙区と、60万人が1人を選ぶ選挙区では、1票の価値に2倍の差が出てしまいます。
そこで、投票価値の平等を絶対視して定数を配分すれば、国会議員が都市部へ集中することになり、都市と地方の間で別の格差が生じます。
その格差は「不平等」とはいえないのでしょうか。
単なる定数の削減や一票の格差の是正だけにとどまらず、現在の小選挙区のままでいいのかといった、選挙制度自体の議論を進めるときかもしれません。